■弱者戦略(後発企業・中小企業の取るべき戦略)
「事業戦略を成長させるには、現在業界で当たり前になっている競争のルールに穴を開けなければならない。つまり事業に成功する人は、自分で新しい競争のルールを創り出していく人である。今市場で行われている競争ルール(業界の”常識”)に則ってやっているだけなら、二位の企業は永遠に二位、三位の企業は永遠に三位のままである。(21頁)」
「ビジネスはどんな小さなセグメントでもいいから、その分野でナンバーワンになるのが勝利のコツ(29頁)」
■強者戦略(デファクトスタンダードの獲得を目指す企業)
「事業には、成功のための最低限の成長ラインがある[…]爆発的に成長している市場の場合は、自社がたとえ年60%の驚異的成長率を遂げても、最後には負け戦になる[ことがある](28頁)」
「ハイテク・ベンチャーがつまずくときは、技術開発で負けるというよりは、生産技術や営業体制で負ける場合の方が圧倒的に多い[…]市場が成長するにしたがって、競争のポイントが移っていくことに、なかなか気づかない(27頁)」
■1980年代に米国産業が骨抜きになってしまった理由
- 70年代に、企業戦略論の拡大という背景のもと「智(戦略企画部門)」と「将(営業能力の高い事業部長)」を分離し、前者に多大な権限を付与する企業が増大する。
- 米国はもともと1株当たり利益の向上を目指す短期的利益を志向する経営風土が強い。
- 経営戦略を担う人材は、MBA取得者や戦略コンサルタントなど数字を重視する人物である可能性が高い。
↓
「手間と時間のかかる製造現場や開発部門の問題解決よりも、手っ取り早くて投資計算もやりやすい財務戦略やM&A戦略に走りがちになる(56頁)」
↓
80年代に非主力事業を高値で売却するというポートフォリオ理論に基づくM&Aの大ブームが到来する。
↓
様々な産業がズタズタになる。
☆反省点:短期的利益を志向する財務戦略やM&Aではなく、長期的競争力を強化するための製品開発戦略や生産性向上戦略を重視すべきであった(vgl. 59頁)
■事業分析の手法
下記を順番に明らかにする。
- 業績:事業ごとの過去数年の売上・売上の伸び率・粗利益率・経費・営業利益・営業利益率など。製品ごとの過去数年の売上・売上の伸び率。
- 市場の規模・成長率:事業が関連する分野の市場規模と成長率。製品が関連する分野の市場規模と成長率。
- 競合:製品ごとのマーケットシェア
- 自社の強み・弱み
- 自社サービス・製品:自社製品のリスト化。プロダクト・ポートフォリオの作成。
○業績の分析
- 粗利益率の低い事業はどれだけ努力しても無意味なので、コストが今後画期的に下がるという見込みがない限り、リソースを投下しないことが望ましい。
- 製品ごとの伸び率から、今後売上が伸びる製品と衰退中の製品を判別する。
○市場の規模・成長率
- 各製品の成長率から、各製品がプロダクトライフサイクルのどこに位置するのかを判断する。例えば、年間成長率が50%近い場合、プロダクトライフサイクルの成長期の頂点である可能性が高いことが予想できる。
- 自社の売上の伸び率が市場の伸び率を下回っている場合、自社の営業部隊がとてつもなく無能である可能性が高い。
○競合・マーケットシェア
競合を認識する
任意の製品のその時点での「プロダクトライフサイクルにおける位置づけ」と「自社のマーケットシェア」から撤退か注力からといった判断が可能になる。
○その他
- 自社製品同士の競合(=カニバリゼーション)が発生することもある。
■ぬるい会社の社員の特徴
「”お客様”と”競争相手”に対する意識が低く、もっぱら自分たちの都合がまかり通っていることが多い(96頁)」
「社員のエネルギーが内向している(95頁)」
↓対策
社員の目を社外(の競争)に向けさせ、この先どうすればより良くなるかを自分たちに考えさせることで、変革に対する当事者意識をもたせ、エネルギーがそこに集まるようにする。
■プロダクトライフサイクルと競争ポジション
導入期:外部参入が容易。製品orサービスの優位性がキーとなる。価格差はキーとならない。
成長期前半:どの企業も似た製品orサービスを出すようになる。製品orサービスそれ自体の質よりも営業体制やアフターサービス網といったいわゆる「面展開」がキーとなる。
成長期後半:価格差による戦いが始まる。面展開や量的拡大の競争になる。
成熟期:競争ポジション(=マーケットシェア)が固定される。各企業がどのような施策を行ったとしてもこのポジションが変動することがなくなる。この時点でデファクトを獲得できていることがビジネスにおける「勝ちパターン」である。
■プロダクトライフサイクルと戦略的な赤字
ルート1:原則的にフェーズに関わらず「良性の赤字」
ルート2:導入期の赤字は「良性の赤字」&成長期後半以降の赤字は「悪性の赤字」
ルート3:フェーズに関わらず全て「悪性の赤字」
■エクセレントカンパニーと再投資サイクル(vgl. 111頁)
エクセレントカンパニーとは、特定の事業がルート1を辿って成熟期・衰退期に来た段階で別の新規事業に再投資をしてルート1の全過程を繰り返すという「再投資サイクル」が自発的かつ活発に機能するような企業風土が創り上げられている企業を指す。
ベンチャー企業の大半で第二のヒット商品や第二のヒットサービスが生まれにくいのは、この再投資サイクルを回すことが一般に困難なためである。
再投資を行う際は「選択と集中」が重要。複数の新規事業に矢継ぎ早に手を出すと既存ビジネスと会社全体が並行して腐っていく。
■ルート1企業とルート3企業それぞれの特徴
書籍117頁参照(※とても良いので書籍未購入の方は購入推奨)
■成功するスタートアップの特徴(vgl. 102頁)
- 一位:経営陣が優秀である。
- 二位:経営陣が優秀である。
- 三位:経営陣が優秀である。
- 四位:行おうとしている事業が成長分野である。
- 五位:製品やサービスにユニークさ(競合優位性)がある。
■プランニングを行うべき理由(vgl. 169頁)
プランニングを行うことで、仮説検証が可能となり、疑似的な失敗体験ができるようになる。これはすなわち、「事業の成功体験を通して失敗体験を得る」という成長機会を獲得可能になることを意味する。
あらゆる事業は必ず事前のプランニングから外れる。そしてそのように状況に応じて事前のプランと異なる方向に進むことは極めて正しい。プランニングの目的は、(元のプランに固執することではなく)そのようにプランからズレた場合に「どの時点で元々の想定からズレるようになり始めたのか」・「元々のプラン作成時点での判断がどのように誤っていたのか」などに関する検証が可能となる点にある。
■戦略や目標を立てるべき理由(vgl. 220頁)
組織が進化するためには、組織の中に何らかの「ゆらぎ」が必要となる。
ゆらぎの要因の代表例が「リーダーシップ」や「高い挑戦的な目標設定」や「遊び」である。
戦略や目標に対して、組織形成が先行した場合、(リーダーシップや遊びといったその他の要因がない限り)進化の発生しない”よどんだ”組織が出来上がってしまう。
■問題のある営業部と優れた営業部(vgl. 188頁)
bad | good |
リーダーシップのあるリーダーが不在 | リーダーシップのあるリーダーがいる |
販売の「目標」が明瞭 | 販売の「目標」が不明瞭 |
営業活動に「絞り(選択と集中)」がない | 営業活動に「絞り(選択と集中)」がある |
製品の良さを説明する「道具」が不足 | 製品の良さを説明する「道具」が豊富 |
「顧客」のニーズや特性をはっきりつかめていない | 「顧客」のニーズや特性をはっきりと掴んでいる |
全体的に「自信」がない | 全体的に「自信」がある |
報酬がインセンティブ制ではない | 報酬がインセンティブ制である |
■戦略遂行における選択と集中(vgl. 218頁)
社内リソースは(体力面でも精神面でも)有限であるため、優れた戦略は「戦いの場」を”選択”した上で、そこに社内のエネルギーを”集中”させる。
その際、組織に一定の「無理を強いる」・「不安を感じさせる」面が生じるがこれは健全である。
■戦略検討のプロセス例(vg. 212頁)
- (戦略策定者の)仕事の優先度の決定
- 全体市場の俯瞰
- 戦略製品の抽出
- 製品の差別化能力の確認
- 価格と利益構造のチェック
- 戦略ロジックの策定
- 組織の強みと弱みの把握
- 市場ターゲットの絞り
- 戦略展開の時間軸
- 価値観の「混乱化」
- 新戦略と実行プログラムの策定
■顧客のセグメンテーション
スコアリングとグレーディングに基づいて顧客のランク付けを行う。
スコアリング高 | スコアリング低 | |
グレーディング高 | A | B or C |
グレーディング中 | B | C |
グレーディング低 | C | – |
■セグメンテーションによる営業活動が機能しない場合の原因
営業がセグメンテーションを守って営業を行っていないことが大半。
SFAを導入し、徹底的に顧客をフォローすることが重要。
■Salesforce上の商談パイプライン設定
書籍254頁参照